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EPISODE

つれづれに

10周年記念日

TREND

2019.10.24
もちろん私的な記念日ではなく今日はリーマンショックからの「それぞれの様々な10年」を記念する一日だ。 

10年前、金融システムは一旦瀕死状態になり、身近な景色では夜の六本木交差点や銀座並木通りから人の姿がしばらくの間消えた。その後各国中央銀行が行ったQEなどの超金融緩和策で金融システムは延命し、夜の街も現在までなんとか息をつないでいる。結果、米国5大銀行の総資産額は金融界全体の44%か47%へと比率を増やし、ノンバンクの規模も拡大しサブプライムローン債権やコブライトの債権など、金融危機の再来につながる金融商品も増加の一途だ。

これは当局の政策の失敗なのか、それとも意図的な結果なのだろうか。健全化を目指す中での失策であるかあるいはそれを装った意図的な結果なのかを正確に読み解く事は、これから必ず起こる史上空前の金融システム破綻後を予測する為には必須である。各国中央銀行が続けているQEは、中央銀行本来の任務とは全く正反対のものでありこれらが目先の利益で現金融システムの長期的維持を放棄して不健全性拡大に突っ走っているのは明白である。QEは、それを止めるとバブル崩壊するので一旦始めるとやめられない、劇薬だ。

通常劇薬を用いる目的は「安楽死」以外にない。当局が行なっている一連の動きは、軟着陸など不可能なのは千も万も承知で始めているとしか思えない劇薬のような策の連続であるのだから、これは意図的な結果だとしか考えられない。特に米連銀は09年から6年間もQEとゼロ金利をやり、次に日欧各中央銀行にQEを肩代わりさせて自身はQEとゼロ金利を止めて短期金利の引上げと資産圧縮を続けている。そうしなければドルに対する国際信用力が失墜して米国覇権体制が維持できなかったからだろう。

ならばこのまま米連銀だけでも健全化へ向けた政策へと大きく舵を切るのだろうか。残念ながらその解はNOと言わざるを得ない。昨年来何人もの著名な投資家が米国株や債券が崩壊すると考えて先物売りに動いたがことごとく大損に終わっている。どうも米当局は金融システムの健全性を重視する常識的で健全な人々だけの集まりではないようだ。昨今の施策はシステム健全化の完全放棄と言ってもよいほどの思い切ったバブル膨張策のオンパレードだ。米金融システムが意外にも延命しているのは、当局がその健全化を完全放棄したからだ、とも言える。

私には、大資本家達が自らの富の源泉とも言える金融システムの破綻を容認しているのは不可解に映るのだが、米国覇権体制維持に経済的合理性がなくなり覇権そのものを放棄し一極集中した覇権体制を別の形に変えようとしているからなのか、とも考えている。そのような彼らにとって既存の金融システムはもはや無用の長物であり、その根源とも言える貨幣そのものの存在すら廃棄すべきものと考えているのかも知れない。だとすれば基軸通貨として存在するドルを基準にした資産形成や分散などは悪い冗談の一つに過ぎず、次の10年後つまり20周年記念日にはドルの基軸通貨性はもはや無くなっており、米国の覇権体制や国家体制そのものも現在とは全く別物になっている事だろう。

果たして、いま盃をかかげている者たちは次の10年後その手に何を持ち得ているのだろうか。

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