loader
loader

EPISODE

つれづれに

コロナショックとは何か その2

TREND

2020.4.20
前述した曲線が示している本質的結論から述べる。

実体経済がほぼ崩壊したこの時期に暴落した株価が反騰する動きは、金融市場のメインプレイヤーである金融資本家達(大手金融機関などのシステムそのもの)が、FRBや政府に圧力をかけ凄まじい規模のQEや財政出動で様々な債権を買わせたり、自己所有する資産のたまり場である株式市場に還流させたりする事でその負債の穴埋めや貪り尽くしをする表層的現象だ。もし金融システム自体を守るのであれば最優先されるべきは株式市場ではなく債権市場だ。中銀群はこの状況下において株価下落すら容認せずに暴落分を反騰させて株価を至上最高値に戻す動きを取っている。経済の根幹である資金調達の安定性を司っている債券市場が崩壊し金利が暴騰すれば政府や企業の資金調達が困難となり人々の生活の総体である経済が機能しなくなるにも関わらずだ。QEの目的は巷にもっともらしく流布している金融システム護持の動きなどでは決してない。

これは破裂することが確実な巨大な膿をそれをつくった当事者たちが、政府と中銀群にそれらすべてを押し付ける「破綻の国有化」以外の何物でもない。そしてこれからの各国政府は不良債権を高値で買い取らされる「ゴミ処理場」として機能する存在となり、その負担は各国民が背負う羽目になるのだろう。「賭場がもう潰れるので国から貪り取れるだけ絞り取ってから店仕舞いしようぜ」という事だ。明らかに「巨大な腐敗」である。
つまりコロナは、最終的に1980年代から続く米英を中心とする世界体制の根幹に位置してきた債券金融システムを破壊する。すでに中銀群をこれで最終であろう無限大のQEに追い込んでおり、その破壊力は中銀群と債券金融システムを共に再生不可能にまで至らしめるだろう。これは起業家や投資家が繁栄を享受できた時代の終焉を意味する。

順を追い説明してゆく。
まず国際金融市場の中心である米国の現状を見ると、武漢からブローバックしたコロナは米国各地域に蔓延し、これから航空会社、石油ガス、小売り、飲食などほとんどすべての分野で企業活動を急激に停滞させ危機的状況に陥れてゆく。この急激な不況により企業や金融機関は米国債ではなく現金であるドルを保有したがっている。売上補填、給与支払、仕入決済、借入返済などに巨額の現金が必要になるからだ。それに民間銀行間の相互不信もひどい状態でFRA-OIS数値が急上昇し他行間融資も停滞し、FRBがレポ市場での資金供給を1.5兆ドルから5兆ドルに急拡大したが資金不足の解消には至っていない。銀行はどこも巨額の債権、債券を保有しており企業が破綻すると連鎖破綻する。

一般的に米国企業は日欧企業と比較して負債が多く融資や起債といった負債生成は信用に依存しており、相互信用が崩壊した時の経済破綻の規模と深さは負債が多いほど甚大になる。国際金融市場は世界的な存在ではあるのだが、その中心である米国経済と市場がパニックになると瞬時にして世界がパニックになる。どの国も対岸の火事では済まない。これから多くの企業がまだ続く米経済の閉鎖、停止状態を乗りきることが出来ずに破綻する。米企業が破綻すれば金融機関や投資家達が連鎖破綻することになるので、FRB、日銀、ECBなど中銀群は経済停止や金融市場の崩壊による巨大な補填補償行う為として、これで最後となる「無限大のQE」を開始した。

次にそのQE実施の動きと総量を見てみよう。それがどれほどの異常な規模であるのかが一目瞭然だ。
先ず、米連銀は3月中旬以降毎週5000億ドルのQEを行い3/11日に4.27兆ドルだった総資産が4/1日には5.27兆ドルに膨れ上がっている。これはリーマンショック以降の10年間で行った3度のQE総量に匹敵する。このペースでゆけば半年後の10月には18兆ドル、来年中に22兆ドルを超える。日銀は3月前半までは10日毎に1~3兆円だったが下旬までの10日間で10.3兆円を実施し3末の勘定でGDPを超える604.4兆円となっている。

ここまで淡々と書いてきたが、この状況がどれほどの異常を超えた異常事態なのかお分かりだろうか。これは世界経済が全停止したすべての資金的補填を米連銀がQEで担う動きだと言える。そしてその動きは今後スピードダウンとブーストを繰り返して、気がついた時には米国GDPを超えて金融システムが保持する債権債務総額250兆ドルの穴埋めに向かっているに違いない。もしこの動きを止めてしまえば瞬時に債券金利が上昇し金融破綻となるからだ。

行きつく処まで行く、そういう事なのだろう。

BACK