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EPISODE

つれづれに

或るシナリオ その弐

TREND

2020.7.22
東西冷戦を使った英米覇権体制は、世界経済の発展を同盟国である西側だけに限定し非同盟国は冷遇された。それらを経済発展させると政治力を持ち覇権構造が多極化してゆくからだ。しかし西側だけの経済発展は1970年代から限界が見え始めた。そこで多極化を目指す集団はニクソンとキッシンジャーを政権に就かせて、共産主義国のソ連や中国と和解を開始させ、80年代のレーガンとゴルバチョフによる冷戦終結に至る道を開かせた。

1971年ニクソンの大統領就任から現在までの50年間は、軍産複合体と多極化を目指す集団との熾烈を極めた暗闘の半世紀だったと言える。米国内での共和党政権は、その後のレーガン、ブッシュ、トランプなど多極化を目指す大統領を多く輩出している。またニクソンのウォーターゲート事件や、彼の依頼で中国と和解した田中角栄のロッキード事件等は、両陣営の熾烈な暗闘の反作用としての表層的現象の一つに過ぎない。その時に彼らを辞任に追い込むきっかけとなった情報をスクープしたとされる記者が英雄視されたが、彼らは軍産に取り込まれた駒の最末端の一つでしかなく、その程度の輩が自力でそのような記事を書けるはずはなかろう。

冷戦は崩された。
が、軍産側への譲歩として金融面での英米覇権(ドルの基軸通貨性)は残された。ニクソンはドルを非兌換紙幣化(ニクソンショック)したのだが、その後英米は日独に協調介入させG5やG7などを組織化しドルの基軸通貨性を維持させた。冷戦終結後1980年代から英米は債券金融システムの拡大(金融自由化)を始め、それ以降30年に渡る債券金融バブルの膨張でその規模は250兆ドルにまでに達した。債券金融システムが生むこの巨額な資金力が英米覇権の軍資金になった。
覇権の主力は、軍事ではなく金融へと移行した。

1990年には新興市場や途上国に金融市場が作られ先進諸国からの投資資金が流れ込んだが、これを放置しておけば多極化が進む為ソロスなどの軍産系の投機筋が為替投機の力を使い新興諸国の通貨を次々に破壊していった。1997年前後のアジア通貨危機がそれだ。また多極化を狙う側の報復として引き起こされたのが2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマン危機だ。また多極化側も資本家の集まりであり、金儲けの仕組みである債券金融システムを意図的に破壊するのは非合理的であり直感的には理解し難いのだが、軍産に乗っ取られた金融界をその根源的システムごと潰して、軍産を排除した「新しいシステムへリセット」する為に金融バブルの崩壊や金融危機が次々と起こされているのだ、とすれば理解に合理性と整合性が生まれてくる。
コロナは一連の動きの最終局面となるだろう。

さて、このような事を考察する意味は何であろうか。
それは知りもしない事をさも知ったかのように賢しらに語るためではない。
その意味は、たとえ小さくとも穏やかで温かみのある生活と心豊かな日々の営みを守る為に、この世には大きな「虚構のカラクリ」があることを知らなくてはならない事にある。それにはまず目の前で起こっている事実を正確に認識し、次にまともな見識と知識を持ちその裏に隠された真実や仕組みを考察し、何が「虚」で何が「実」なのかを分別しなくてはならない。
でなければ、我々は搾取される為にただ肥え太らされて最後には屠殺されるだけの家畜や、激しい渦の中で翻弄され続けどれだけ足掻こうがそこから決して抜け出せない虫ケラと同じだ。否、「ホモ・サピエンス(賢いもの)」などと自称し勘違いして気取っている分だけ、単に「質(たち)の悪い贋物」以外の何ものでもなく、ただ幻想の中で幻惑されてそこにあるだけ、の存在でしかない。

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